浅田漆器工芸について

浅田漆器工芸は、山中漆器の産地・石川県加賀市山中温泉で、代々受け継がれてきた技術を礎にものづくりを続けています。
木を挽く人、漆を塗る人。
この土地で受け継がれてきた職人たちの手仕事とともに、一つひとつの器をつくってきました。
私たちが大切にしているのは、伝統をそのまま残すことだけではありません。
暮らしや食卓が変わっていくなら、漆器のあり方も変わっていい。
受け継いできた技術を大切にしながら、今を生きる人たちが自然と手に取りたくなるものへ。
それが、私たちのものづくりの出発点です。
この場所だから、生まれるもの。
私たちの工房があるのは、田んぼや山々、豊かな自然に囲まれた場所です。
決して便利な場所ではありません。
けれど、ここで暮らし、ものづくりをしているからこそ見える景色があります。
春の芽吹き、夏の夕暮れ、秋に色づく山々、雪に包まれる冬。
同じ場所にいても、季節や時間、光によって景色は少しずつ表情を変えていきます。
一方で、自然に囲まれた場所にいるからこそ、都会の景色に憧れることもあります。
夜の街に浮かぶ窓の灯り。街灯やビルの光がつくる、美しい夜景。
身近にある自然も、遠くにある憧れの景色も、私たちにとってはものづくりの源です。
この場所で暮らしているから見えるもの。
この場所にいるから、憧れるもの。
私たちが心に残った景色や記憶を、色や質感、漆の表情へと置き換えながら、私たちは器をつくっています。
受け継いだ技術に、新しい表情を。
その考え方は、これまで生み出してきたさまざまな器にもつながっています。

木の温もりに、金属を思わせる現代的な色彩を組み合わせた「うつろい」。
木と真鍮という異なる素材を組み合わせ、それぞれの魅力を一つの器にした「もてなしグラス」。
夕暮れの空や夜の街、雪の夜など、心に残る景色を漆の色の移ろいで表現したグラデーションの器。
そして、漆と和ろうそくの煤によって、一つとして同じもののない表情を生み出す「叢雲塗」。
表現はそれぞれ違います。
けれど、その根にある考え方は同じです。
山中漆器の技術を土台にしながら、素材、色、技法を組み合わせ、今の暮らしの中で心が動くものをつくること。
昔から続くものを、そのまま繰り返すのではなく、今の時代だからこそ生まれる山中漆器の新しい表情を探し続けています。
手のひらの中に、小さな景色を。
器は、飾って眺めるだけのものではありません。
手に取り、料理や飲み物を盛り、誰かと食卓を囲みながら、日々の暮らしの中で使われていくものです。
だからこそ、使うたびに少し心が動いたり、ふと景色や記憶を思い出したりするようなものをつくりたい。
山中で受け継がれてきた技術と、私たちが暮らしの中で感じてきたもの。
その二つを重ねながら、これからの暮らしに寄り添う漆器をつくっていきます。
手のひらの中に、小さな景色を。
それが、浅田漆器工芸のものづくりです。


